二つのネットワークを仲介するネットワーク機器のうち、Layer2で仲介する機器を「ブリッジ」と呼びます。スイッチングHUBは「多ポートのブリッジ」です。今回は、特にイーサネット同士など転送先ネットワークのメディアが同じネットワークの間で稼働する「ブリッジ」の掟を解説しましょう。
「ブリッジの掟!」
「ブリッジ」は次のような掟に従って動作していると考えることができます。
- あるポートに受信したフレームを、他のポートに対して、変更を加えずそのまま転送する
- 送信するポートでは、送信するメディアが使用可能になるまで待機してから送信する
- フレームの宛先MACアドレスがマルチキャストアドレスの場合は、受信したポート以外の全ポートに対して転送する(フラッディング)
- (オプション)フレームを受信したポートには、フレームのソースMACアドレスフィールドの値を学習(記録)する
フレームの宛先MACアドレスがユニキャストアドレスで、いずれかのポートに学習されていれば、学習済ポートにだけ転送し、いずれのポートにも学習されていないMACアドレス宛フレームは「宛先不明のユニキャストフレーム」として受信したポート以外の全ポートに対して転送する(フラッディング)
ブリッジ機器では2項の掟の実現のためフレームバッファを持っています。
4項はMACアドレス学習機能のことで、記録する場所を「MACアドレステーブル」(CISCOではCAMテーブル)などと呼んでいます。アドレス学習機能は、今日知る限りすべてのスイッチで実装されていますが、スイッチ製品の中には、あえてこのMACアドレス学習をしない動作モード設定ができるものも存在しています。「Flooding mode」などと呼ばれ、入力されたフレームが宛先不明ユニキャストフレームとして必ず全ポートにフラッディングされるので、空きポートに接続したPCなどでWireSharkを使ってキャプチャを行うときに便利です。
なお、フレーム転送の方式には、以下の3つの方式があります。
- 「ストアアンドフォワード(Store and forward)」:フレーム全体を行ったん保存してから送信を開始する方式
- 「カットスルー(Cut Through)」:先頭6byteの宛先MACアドレスだけを読んで転送を開始する方式
- 「フラグメントフリー(Fragment Free)」:イーサネットの最低フレームサイズである先頭から64byteまでを読んで転送を開始する方式
今日では転送機能がハードウェアで実装されて十分な性能を実現できていることから、ほとんどすべてで「ストアアンドフォワード」が使われています。
異なるメディアを仲介する「ブリッジ」の例
Wi-Fi APも「ブリッジ」なのですが、イーサネットとWi-Fi(IEEE802.11無線LAN)を仲介するものであるため、フレーム構造の一部を変換します。そもそもWi-Fiの規格である「IEEE802.11」は「イーサネット/IEEE802.3」との間で互換性を保つように定められたので、必要最低限の変換を双方向で可逆的に行えるのです。
実際に運ばれているIEEE802.11のフレーム構造は、イーサネットとは異なった形なのですが、フレームを送信する側・受信する側で見れば、イーサネットフレームがそのままやり取りされているとみても差し支えないようになっています。
IEEE802.11とイーサネットのフレーム構造の違いは、例えば以下のようなものです。
- MACアドレスフィールド:イーサネットフレームにも存在している「宛先(Dstination)」、「ソース(Source)」、のほかに実際に無線のフレームを送信した「Sender」、無線フレームを受信する「Receiver」を加えた最大で4つのMACアドレスフィールドがあります。WDSと呼ばれる無線AP間のWi-Fi通信に有線区間の通信をカプセル化して送る通信では、4つのフィールドが使われます。
- 無線区間だけに表れる制御フレームがあり、制御フレームと実際に通信に使うデータフレームを識別するフィールドがあります。
- 無線フレームが不安定な空間を通して確実にやり取りできるように受信側から受信したことを示すACKが一定時間に送られてこなければ、送信側は再送します。再送するときに、再送であることを示すフィールドなどがあります。
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